30 SEP 2025

Letters from Italy Vol.35

「Letters from Italy」ではみなさまに少しでも旅気分を味わっていただくべく、ミラノやフィレンツェの誰もが知る観光スポットから、最新情報やとっておきのスポットをジャンニキアリーニのイタリア現地スタッフよりお届けいたします。

9月の行事　～トスカーナのぶどうの収穫～

トスカーナはイタリア中部の中心に位置し、魅力的な町、牧歌的な起伏のある風景、そしてワインで知られています。

9月のトスカーナは、収穫の季節。

ぶどうの収穫は単なる季節行事ではありません。それは、土地と労働、そしてコミュニティを結びつける行事です。

キャンティーの丘陵、モンタルチーノの斜面、モンテプルチャーノのぶどう畑の中で、ぶどうは実を膨らませます。
その色は鮮やかな緑から深い紫、そして金色へと移り変わり、標高や気候によって9月上旬から10月にかけて続く収穫の始まりを告げます。
この時期、ぶどう畑は生命のざわめきに満ち、熟したぶどうの甘い香りが空気を漂います。

トスカーナのぶどう収穫祭「ラ・ヴェンデミア」は、深い文化的・経済的意義を持つ古来の伝統行事です。
熟練した数十人が列を移動し、重たい房を丁寧に切り取り、完熟した果実を籠に詰めていきます。この労力を要する瞑想的な作業はワイン製造の核心を成します。なぜなら、それぞれのぶどうの品質が、これから生まれるワインの特性を直接的に決めるからです。

2025年トスカーナのぶどうの収穫はどこで行われるのか。

トスカーナのぶどうの収穫がこれほどまでに特別な体験となる理由の一つは、この収穫祭が地域全体で繰り広げられることにあります。
また、収穫では毎年新たな発見があります。

モンタルチーノのなだらかな丘陵から、カルミニャーノの歴史あるぶどう畑まで、トスカーナのワイン地帯はモザイクのように多様なテロワールを形成しています。

それぞれが独自の景観、伝統、そして個性豊かなワインを育みます。もしあなたが10年間、毎年秋に訪れても、二度と同じ収穫体験をすることはないでしょう。

2025年9月トスカーナのぶどうの収穫（外部リンク）

9月のファッション舞台　～ミラノ・ファッション・ウィーク～

毎年9月、ミラノは単なる都市ではなく、舞台へと変貌します。
クアドリラテロ・デッラ・モダ周辺の石畳の道は、デザイナーやモデル、好奇心旺盛な見物人たちがミラノ・ファッション・ウィークに集うため、期待感でざわめきます。しかしながら、ランウェイやカメラのフラッシュの奥には、もっと深い何かがあります。それは、何十年もこの街のアイデンティティを形作ってきた、活気あるイベントの証人となる感覚です。

2025年9月23日から29日の期間、ミラノは再びファッションの中心地となりました。

ミラノ・モーダ・ドンナ（女性向けのファッション・ウィーク）では、2026年春夏コレクションが披露されました。それは、ビッグネーム、新進気鋭のデザイナー、華やかなショーなどです。しかし、今シーズンはさらに多層的な内容となりました。それは、賛辞、パブリックイベント、業界会議、そして文化的ファッションなどです。

今年のショーは、格別な重みを持ちました。
半世紀に渡り、ミラノのエレガンスを定義した静かなる革命家、ジョルジオ・アルマーニ氏の逝去を受けて開催されたからです。
2026年春夏コレクションの彼の最後の貢献作が披露され、その不朽の影響力を称えるアーカイブ作品の展示が行われました。
巨匠を称えつつ、新たな才能に場を与えるこの街では、継承と刷新の気配がひしひしと伝わってきました。

メインウィークの期間、街そのものが舞台へと変貌します。
ランウェイショーは、従来の会場から予想外の空間へと広がります。それは、18世紀の宮殿、ミニマリスト風の中庭、光と音楽の神殿へと生まれ変わった工業用倉庫などです。

クアドリラテロ・デッラ・モダは、新たなウィンドウディスプレイで煌めき、ブレラやナヴィーリ地区のカフェは、編集者、バイヤー、夢見る者たちの待ち合わせスポットになります。

招待状がなくてもファッションウィークは、街中に溢れています。パブリックインスタレーションやオープンイベントが街中に豪華な光景をもたらします。
ドゥオーモ広場の大規模アート作品、サンニオ通りでの新進デザイナー展示、隠れ家的な中庭での深夜のプレゼンテーションなどです。

モンテナポレオーネ通りを歩くだけで、オートクチュールと大胆なストリートスタイルが現存のギャラリーを歩いているように錯覚します。